第四章 近づく〈塔〉

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 穏やか、幸せ、楽しい……。手にはブーケ……。 「わかった!」 「……ほら俺たちが最後だから急げ」 「〈ワンドの4〉! ねえ浅田さん! ほら、〈ワンドの4〉みたいこの景色! ねえってば!」  前に浅田が〈ワンドの4〉のカードで願掛けをしていると言ったから、どんな絵なのか調べてみたのだ。そのとき見た絵が、この教会の風景によく似ている。  四本の棒がまっすぐに立って、上部は植物で飾られている。その向こうではブーケを掲げた人物や、踊っている人たちが描かれていた。それが〈ワンドの4〉。  意味はたしか、安定や調和、祝福、幸福。そこからさらに想像を膨らませば、もう一つのキーワードにたどり着く。 「もしかして〈ワンドの4〉って、結婚って意味もあるんですか?」  浅田は背を向けたまま何も語らない。 「あの絵、すっごい祝福ムードだったし、ウェルカムな感じだったし」  浅田の腕を引っ張って見上げると、苦そうな顔をして夏輝と目を合わせない。 「ねえ浅田さんってば!」 「……まあ、なくもない」 「どっちですか」 「カード一枚一枚の意味なんて何パターンもあるんだ。夏輝がそう思うならそれでいいだろ」  不機嫌そうな様子で、相変わらずこちらを見ない。     
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