第四章 近づく〈塔〉

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「何でそんなにむっつりしてんですか? でもそっかあ、浅田さん、玲子さんと東城さんに向けて、挙式するように〈ワンドの4〉で願掛けしてたんですね。願いが叶いましたね」  浅田が低い声で何か言い返している。 「え? 何ですか、聞こえない」  駆け寄って見上げると、浅田が足を止めて夏輝を見下ろした。 「あれは、玲子たちにじゃない」 「え? じゃあ誰に――」  夏輝の何の引っかかりもない問いかけに、浅田の眉間が一瞬で寄った。まさか、と思うや否や、浅田がまた背を向けた。ゆっくりと歩き出す浅田を夏輝も追う。しばしの沈黙のあと、 「――ま、部屋は余ってるし」  唐突に浅田が口を開いた。 「……はい?」 「夏輝はよく食うからな」 「はい」 「あれだったら、……うちに引っ越してきてもいいぞ」 「は……?」 「通うのが面倒ならってことだっ」 「え、それって嫁に来いっていう意味?」  何も答えず、ずんずんと浅田の歩調が早まった。 「ねえねえ、浅田さんってば」  浅田はやはり答えない。だが否定しないということは、肯定と受け取っても構わないということか。 「でもまだ付き合ってもないのにー。ていうか本当にどういう意味? そういう意味? それとも別の意味? ねえねえ」 「ああもう、うるせえ! じゃあ今日から付き合うぞ!」  後ろ姿の浅田の耳が、真っ赤になっていた。 「はいっ、わかりました」     
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