第一章 目隠しは誰がした?

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 それから数日後、資料室で、また唇を重ねた。その日はいつもより官能的なキスで、東城さんの手が、私の服の中に潜り込んできた。びっくりして、本当にびっくりして、……どうしていいかわからなくて、思わずはねのけてしまった。ごめんなさい、でも会社ですし、などと言って、とにかく謝った。  嫌われたかと思ったけど、その後も東城さんは変わらず私に接してくれた。ホッとしたし、嬉しかった。やっぱり好きだなって、改めて思った。 「おはようございます東城さん。珍しい、今日はギリギリですね」 「いやー、うっかり寝坊して慌てたよ。走ってきたからのど渇いちゃった」 「……えっ」  あのとき―― 「なに? 坂井さん」 「あ……いえっ、私、お茶いれてきますね」 「ありがとう、助かるよ」  そう、今までどおり接してくれる東城さんに、今までどおり応じていた私は、やっぱり、好きだったんだと思う。 「――おい、どうした」  数ヶ月前を漂っていた意識が、ビジネスホテルの浅田の部屋へと引き戻された。表の道路から酔っ払いたちの笑い声と、車がスピードを落として通過する音が聞こえた。 「あ……すみません、えっと、何でしたっけ?」  明るく語ったのに、浅田の目は少しも笑わない。 「そいつと出会った頃が、ピークっちゃあピークかな」  十字の一番左にあるカードを取って、夏輝に見せる。金色の聖杯を持った、白馬の騎士が描かれたカードを。 「〈カップのナイト〉。この絵の通り、白馬に乗った王子様だったわけだ」 「ええ、まあ……」     
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