第一章 目隠しは誰がした?

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「恋愛がテーマだってのに、それらしいカードは過去を表すこれ一枚だけだ。現状から先は黒いカードやらソードやら、恋愛とは程遠いカードばっかりだなあ」  黒いカードとは〈悪魔〉や〈死神〉のことだろう。ソードとは剣のこと。タロットには他に、棒を表すワンド、聖杯を表すカップ、金貨や護符などを表すペンタクルが描かれたカードがあり、それぞれ1から10までの番号札と、ペイジ、ナイト、クイーン、キングの人物札がある。これらは小アルカナと呼ばれ、全部で五十六枚。トランプより少し枚数が多い。  小アルカナに対して、大アルカナと呼ばれるカードもあり、こちらは二十二枚。〈審判〉や〈塔〉のカードはこれである。大アルカナだけでも占いは可能だが、浅田は小アルカナも含めた全七十八枚を使っていた。……夏輝は大アルカナすら意味を覚えることができず、挫折した。 「それでだな……」  獣がうなるような低い声をもらし、浅田が顔を上げた。その口が重々しく開く。 「その男、他に女がいるんじゃないのか?」 ――鈍器で、頭を殴られたかと思った。 「な……何でそんな……そんなこと……」 「ここに並べた十枚のカードを見てるとな、そう言ってるようにしか思えないんだ」  浅田は大きな十字の、水平に並んだ三枚のカードを指した。     
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