第一章 目隠しは誰がした?

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「悪魔に二人の男女が捕われている。でもよく見ろ。二人を捕えてる鎖はゆるっゆるだ。逃げようと思えば逃げられる。つまりこの二人は、わかっていてこの状況から抜け出さずにいる。故に〈悪魔〉のカードは、人間の心の弱さを表すとも言うな」  黙って浅田の解説を耳に入れる。目は決して合わせないように。  カードが元の位置へ戻される。浅田が次に指したのは、小十字の横向きのカード。 「ここは現在の状況にクロスするものだ」 「クロス……ですか」 「交差するもの、通りすぎるもの。今回の場合は、今のお前が悶々と悩んでる原因となったもの――ってとこか」 「原……因……ですか」 〈カップの5〉は、黒いマントをまとった者が、背を向けて立っている絵。五つの聖杯のうち三つが倒れ、男はそれを見て肩を落としている。 「……すごく、落ち込んでいるように見えますね」 「そうだな。失望、絶望、落胆。あとは、――期待を裏切られた」  ピクン、と夏輝の顔が上がる。それを浅田の目が捕える。 「期待を裏切られて、ひどく落ち込んで、未来を見ることができない。だから今、どうしていいかわからない。違うか?」 「さ……さあ、どうでしょう」  目をそらして床を見る。カードを直視することに、少なからず抵抗を感じた。 「さて一体何に落ち込んだのでしょうか、と」  次は十字の右側、縦四枚に並ぶカードへ移った。下から二番目のカード〈ソードの7〉を、人差し指でトントンと小突く。     
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