第一章 目隠しは誰がした?

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「こいつがな、いただけねえんだよな」 〈ソードの7〉に描かれた人物は、七本の剣のうち、五本を両手に抱えてこっそり走り去っている姿だ。 「これは相手の男を表す。〈ソードの7〉は水面下で何かやらかすカードだ。秘密裏に、狡猾に。恋愛の場合だと、例えばそう、不倫――とかな」  背骨が、凍りついた。顔が強張って、表情を作れない。浅田の顔を、まともに見ることができない。 「相手の男は二股をかけていて、お前は不道徳な状況に捕われている。それが〈悪魔〉の正体。このままいくと〈死神〉の逆位置で終わるに終われず、ズルズルと関係を続ける。で、さらにその先の未来にあるのが〈塔〉だ。青天の霹靂がお前を襲う。もしかしたら、相手の奥さんともめて、破局――」  膝に乗せた夏輝の両手が、小さく震えていた。 「この流れで見ると、過去の〈カップのナイト〉も正位置ではあるが、逆位置寄りの意味だろうな。つまり、やさしく接してきて、その本性は女にだらしないっていう――」 「やめて!」  耳をふさぎたいくらいだった。背中を丸め、握りしめた手は大きく震えている。  遠くから、救急車のサイレンが聞こえた。浅田が静かに息を吐く。 「お前よ、本当はわかってたんだよな? 相手が二股かけてること」     
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