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「〈悪魔〉も逆位置で出た。今の状況から抜け出しつつあるという意味もあるが、ここできっちり抜け出しているなら未来に〈死神〉が逆位置で出るわけがない。つまりお前がさっき言ってたことも加味すると、ここでの〈悪魔〉の逆位置の意味は――このままではいけないと思っているのに、抜け出そうとしない。……そんなところか」
夏輝は目を合わせず――いや、合わせられずに立ち上がった。イスが倒れそうになって大きな音を立てる。
「どうした?」
「……部屋に戻ります」
「何だ急に」
これ以上は、もう、聞いていられない。
「これからが大事な話なんだぞ。運勢をいい方に向けるための方法を――」
「もう結構ですっ」
吐き捨てるように言ってドアへ向かう。足元がふらつくほど、めまいを覚えた。
「おい!」
「ありがとうございました。おやすみなさい」
翌日、夏輝は生産者たちと別れの挨拶をして帰路へ着いたが、浅田とは一度も目を合わせなかった。
〈悪魔〉のカードは、たしかに夏輝の心の弱さを表していた。
そして〈ソードの8〉の目隠しをしたあの女性は、何度イメージを掻き消しても、己の姿にしか見えなかった。
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