第一章 目隠しは誰がした?

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 金曜の夜、仕事を終えた夏輝は、アジア風のこじゃれたバーのドアを開けた。南国にありそうな観葉植物越しに、カウンター席へ座る女性が見えた。待ち合わせしていた、葉月玲子(はづきれいこ)である。 「今日もいい女だなあ」  苦笑しながら玲子へ近づく。肩より少し長い髪には艶があり、腰はキュッとくびれ、長くて美しい脚を組んでいる。持ち上げたカクテルグラスまで脚が細くて長い。それを形のいい唇へ運び――優雅に飲み干してしまった。 「今日も酒強いなあ」  苦笑が深まる夏輝に気づかず、玲子は「マルガリータ、おかわりお願い」と男性店員に微笑んでいる。快く応じる男性店員にも、そこはかとなく色気が含まれているように見える。 「今日もモテてるなあ」  玲子に対する妬みや嫌悪はない。純粋にこの葉月玲子が好きだし、同じ女性として憧れていた。大人になってからの、しかも自分と馬が合う友達というのは、本当に貴重だと思う。 「あと一緒に生中もお願いしまーす!」  その声で玲子が振り向く。 「あら気づかなかったわ。お疲れ。先に始めてたわよ」     
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