第一章 目隠しは誰がした?

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 ちなみに、マルガリータは口当たりがいいのでついつい飲みすぎてしまうが、テキーラベースなので実は結構度数が高い。玲子がいつも涼しい顔で飲んでいるので前に夏輝も試してみたが、二、三杯飲んだら、生まれて初めて記憶をなくした。 「っかー! ビール美味い!」 「夏輝ちゃん、いつも気持ちのいい飲み方するわね」  口紅の乗った玲子の形のいい唇が、ふふっと笑う。お互い仕事で会うときは名字で呼ぶが、プライベートでは名前で呼び合っていた。 「今週は疲れたなあ……」  のど越しのいいビールを飲めば、いつもならそれだけでご機嫌になれる。でも今日は、ビールの力だけではどうやら足りない。 「あら、本当にちょっと疲れた顔してるわね。ちゃんと寝てる? 夏輝ちゃん」  いえ、と首を小さく横に振る。 「実は、……ちょっと、悩んでることがあって。その件で今週はいろいろとまた心乱されたりして……」  東城と浅田の顔が浮かぶ。玲子は即座に、 「あら男の人?」  と好奇心で目を輝かせた。新しい恋の話なら質問攻めにしちゃうわよ、という雰囲気に空気が染まった。 「いや……、ご披露できるほどロマンチックな恋バナだったらよかったんですけど……」  苦笑してビールをまたのどへ流し込む。 「あら、でも男の人なのね?」  おどけた様子を引っ込め、すぐに大人の女性の顔で聞き役に転じるあたり、さすがだなと思う。     
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