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水位がようやく半分まで減ったジョッキを置く。大粒の水滴がジョッキの外側を滑り落ちていった。
「男の人ですけど、でも……」
――急に、自分でも止められないほど本当に急に、目頭が熱くなって、声が揺れた。慌てて大きく深呼吸をする。どうしよう、こんな重い話、玲子さんだって迷惑に決まってる。
「いいわよ」
囁くような声で玲子が言った。
「夏輝ちゃんが楽になりそうなら、いくらでも聞くから。私でよければ、何でも話して」
玲子の囁き声と、背中に触れた手で、そっと後押しされる。――もうダメだ。夏輝の顔が、気持ちが、泣き崩れる。
「こんな話、会社の人には、言えなくて……。玲子さんしか……私……っ」
うん、と玲子が薄く微笑む。
「ゆっくりでいいよ、夏輝ちゃん」
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