第一章 目隠しは誰がした?

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 夏輝は食品を扱う会社に勤める二十八歳。今日は農作物の視察と、近場の生産者たちとの交流を兼ねた一泊の出張。ついさっきまで農家の元気なおっちゃんたちとホテルのお座敷でどんちゃん騒いでいたが、あとは若いもんで二次会やってこい、と一緒に放り出された相手がこの浅田和正だった。若いもんがこれしかいないのかと思うと、後継者不足も深刻である。 「十時には閉店だ。いいからもうやめとけ」  日頃の農作業で鍛えられた両腕をがっちりと組んで仁王立ちしている。きっとあきれているのだ。二次会とは名ばかりで、夏輝は「雑誌で紹介されていた『占い街道』に行ってみたい」と浅田に案内させ、何度も占ってもらっていた。 「私、占い大好きなんですよ。本当にこれで最後にしますから」  ここでやめるわけにはいかない事情が、夏輝にはあった。 「違うだろ」  ぴしゃりと諭す声に振り返ると、仁王立ちした浅田が口を開いた。 「ハシゴしてんのは、占いの結果に納得いかないからじゃないのか?」  見下ろす浅田と、目が合う。 「言われたことに、ピンとこないんだろ?」 「そう……かもしれません……けど……」  言いながら顔を背ける。 「そういうやつは、占いに依存するぞ。望む結果が出るまでハシゴしたり、あるいは望む言葉を言ってくれる占い師に通い詰めたりな」  いろいろと言い返してやりたいが、すでに夏輝の行動も当てはまっているので何も言えない。 「それともう一つ気になったんだが」 「何ですか」 「本当は何を知りたいんだ?」 「――え?」     
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