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どこから、誰のことから話すべきか悩み、夏輝はまず浅田のことを話した。
「出張先で知り合った生産者で、三十歳くらいの男の人なんですけど……。その人、占いをする人だったんです」
「へえ……。占いってどんな?」
「タロットです。浅田さんという方なんですけど、口は悪いし、ズケズケと人の心に土足で踏み込んでくるし……」
玲子は相槌を打ちながら話を聞いてくれた。
「本当に、ズケズケと……」
「踏み込まれちゃったのね。夏輝ちゃんが隠したかった部分に」
ジョッキを持つ手に力が入った。これから話すことを聞いても、玲子はまた今までどおりに付き合ってくれるだろうか。
「私、実は社内に……付き合ってるのか、そうじゃないのか、ちょっとわかんない状態の人がいて。すごくステキな人で、少し前から親しくしてくれて……。東城さんっていう……あっ」
うっかり実名を出してしまった。一応玲子とは会社同士の付き合いである。
「聞かなかったことにするわね、今の」
玲子もすぐに察してくれた。でも夏輝は首を横に振った。
「いえ、構いません。私、玲子さんのことは本当に……心から信頼してますから」
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