第一章 目隠しは誰がした?

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 玲子はかすかに眉を上げて、少し、驚いたような顔をしていた。 「あ、玲子さんがご迷惑じゃなければですけど……」  今度は玲子が首を振る。 「全然、迷惑なんかじゃ――」  語尾は途切れたように声が消えた。玲子は口を真一文字に結んでいたが、夏輝と目が合うと口角を上げて笑顔を見せた。――一瞬、泣いているのかと思った。 「その人とのことを、浅田さんに何か言われたのね?」  いつもの玲子に戻って、話が再開される。 「――はい」  浅田にあの夜言われたことを、包み隠さず打ち明ける。途中で部屋を飛び出したことも、〈ソードの8〉のことも。 「浅田さんに言われました。私が、……わざと真実から目を背けているって」  目隠しをされ、体を縛られ、八本の剣に囲まれた〈ソードの8〉の女性。でもよくよく見れば、体の縛りは緩く、足は自由だった。剣に囲まれてはいたが、空いている部分もあった。逃げようと思えば逃げられるのだ。本当はきっと、彼女はそのことに気づいている。もしかしたら目隠しも、自分でやったのかもしれない。都合の悪いものが、目に入らないようにと。 「悔しいけど――はい。私、わざと見ないふりをしていたと思います」     
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