第一章 目隠しは誰がした?

33/38

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「ねえ、夏輝ちゃんは浅田さんに、何を占ってもらったんだっけ?」 「ええと……、どうしたら、迷いが晴れるか」  うん、と玲子が小さくうなずいた。 「迷ってるってことはやっぱり……、その人のこと、本当に好きだったのよね?」 「え……」  その瞬間、勢いよく涙が目にたまった。 「うん、わかった。何も言わなくていいよ。ごめんね余計なこと聞いて」  玲子は穏やかに言って、夏輝の背中をやさしくなでた。 「本当に、好きだったんだね」  慈しむ声にまた涙が押される。慌ててハンカチを出して、目を押さえた。 「でも本当にもういいんです。私は東城さんの奥さんを不幸にしたくないし、争うようなこともしたくない。そんなことをしたって私が幸せになれるわけがない。わかってるけど、でも、どうしたらこの気持ちが……次へ行けるのか、わからなくて……っ」  相槌を打つように、玲子が背中をなでる。それに、と夏輝は嗚咽に負けながら声を絞り出した。 「まさか私が、う……浮気相手に……されるなんて……っ。それは、やっぱり、ちょっと、……辛いなあって……」  玲子が夏輝の肩を、ぎゅうっと抱きしめた。 「ちょっとじゃないでしょう?」  涙はいよいよ止まらなくなった。玲子がやさしく、慰めてくれるから。     
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加