第一章 目隠しは誰がした?

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「弱い部分を見せられる人が玲子さんにいるのなら、その他大勢の前では強がっていてもいいと思います。でももしも、玲子さんにそういう人がいないなら、一人で頑張らないでほしいと思ってます」  夏輝を見つめる玲子から、笑みは消えていた。 「そしてできることなら、私が玲子さんの弱い部分を受け止められる人に……なりたいな……なんて、年下のくせに生意気ですよねすいませんっ」  腹を割って話すこと自体気恥ずかしいのに、こんな愛の告白のようなことを言って、夏輝は頬が熱くなるのを感じた。  照れ隠しに、残ったビールを飲み干す。ジョッキを置いてちらりと玲子を見ると、 「やだ夏輝ちゃんたら! かわいいこと言ってくれるんだから!」  と、いつもの艶っぽい笑顔になっていた。でもその笑顔になる直前、玲子がかすかに泣きそうな顔をしていたのを夏輝は見逃さなかった。 ――玲子はきっと、同性の友達が少ないのだと思う。これだけの容姿なら、誤解や妬みも多いはずだ。  玲子とは事情が違うものの、夏輝も親友と呼べる存在は今まで皆無だった。男女問わず大勢で場を楽しむのは得意だが、女子同士で群れたり、たとえ彼氏でも一対一の閉鎖的な関係は苦手だったからだ。一人でいても特に不自由だとは思わなかったが、今になって相談できる友人がまったくいないという事実に打ちひしがれる。     
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