第一章 目隠しは誰がした?

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「……運勢って、よくできるものなんでしょうか。運勢とか運命とか、決められたものなんじゃないのかな」 「じゃあそのへんも聞いてみたらいいじゃない?」 「……他の占い師さんじゃダメですか」 「ダメよ。だってズバリ踏み込んできたのはその人だったんでしょう? 浅田さんと会うべきよ」  それはごもっともなのだが、先日のことを思い返すと自己嫌悪しかない。我ながら子供っぽいことをしたと思う。浅田もぶしつけではあるが、そもそもは夏輝の恋愛事情が原因なのだから、浅田ばかりを責められない。 「玲子さんっ、一緒に来てくれませんかぁ?」 「ダメ! これは夏輝ちゃんの問題よ。メソメソしない!」 「えーっ、玲子さぁんっ」 「ダメったらダメ!」 「……玲子さんに叱られるの、何か嬉しいかも」 「あら夏輝ちゃんたらかわいいんだから。ねえ、おかわりするでしょ? 私もビールにしようかな」 「珍しいですね、玲子さんがビール頼むなんて」 「夏輝ちゃんとしっかり乾杯したくなっちゃったから」  たしかにマルガリータではグラスをぶつけ合う乾杯はできない。ふふ、と目を細めて笑う玲子につられて、夏輝も笑顔になった。  何だろう、この感じ。何だろう……。夏輝は今までに感じたことのない、戸惑いと心地よさに襲われていた。  ビールが二人の前に置かれた。 「かんぱーい!」     
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