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「多かったですか? 一応二人分のつもりなんですが。無理なら私食べますから」
冗談でも何でもなく、これは夏輝が食べる量の二人前だ。ただし普段はこんなに野菜を食べられない。これだけ新鮮なものをこんなに買っていたら破産してしまう。
「安心しろ、適量だ」
「よかった。はいこれ、冷やし中華のタレかけてくださいね。足りないと思うのでこっちのタレも使ってください。私好みに作ったのでお口に合うかわかりませんけど。じゃ、いっただっきまーす」
浅田は豪快に食べる夏輝をしばし見つめると、軽く吹き出した。
「何ですか?」
「お前、気持ちのいい食い方するな」
誰かにも似たようなことを言われた気がする。
「だってお腹すいたし、野菜もすごく美味しいし」
「そうか、それはよかった」
「街にいたら、これだけの質と量の野菜なんて食べられませんから」
「そうか、それは大変だな」
「こんなに野菜食べ放題で、今日はとっても幸せです」
そうか、と言う浅田は、箸で麺をすくうものの、なかなか口に運べないほど肩を震わせて笑っている。
「……どうかしました?」
「いや、何でも……」
と言いつつ、まだ下を向いて笑っている。
「ええと、野菜いっぱい使ってすみません……?」
なにかやらかしただろうかと、そんなことを謝ってみる。
「いや」
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