第二章 逆位置の〈太陽〉

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 短く言って、浅田はこの前と同じ十枚のカードを取り出した。テーブルに前回のケルト十字が再現されていく。  その間に夏輝は、ぽつりぽつりと語った。相手の男が一度だけ指輪をしていたことを。浅田は黙ってカードを並べながら聞いていたが、夏輝の話が終わると静かに口を開いた。 「お前に不倫は無理だぞ」  はっとして顔を上げると、浅田と目が合った。しかめっ面をしているが、どこか労るような目に思えた。 「一度しか見てなくても、指輪をしてたなら既婚者だ。むしろ普段は外して独身に思わせていたんだからタチが悪い。自分の妻も、周りの人間もだましている。それで気のある素振りで近づいて来たんなら、お前は一応被害者だ。でもな――」  でも、わかってる。浅田さんが何を言いたいかはわかってる。夏輝は自らそのあとを続けた。 「既婚者だと知ってもなお、付き合い続けていたなんて、私も同罪ですね」  扇風機の音が大きく聞こえる。なぜかうっすらと笑みが浮かんだ。何てバカな女だろう。少しやさしくされて、気が合うと思って、気があるんじゃないかと思い込んで、抜け出せなくなっていた。 「たまたま好きになったのが既婚者だったっていう不幸はあるだろうが、相手には家庭がある。迷惑かけちゃいかん。奥さんに恨まれても厄介だしな」 「わかってます……」     
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