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姿勢を正して仕切り直す。一度笑ったおかげで、さっきの陰気くささは吹き飛んでしまった。
「再開する前に、一つ、言っておく」
浅田も取り乱したことを仕切り直すように、咳払いをした。
「もしもお前が、どうしてもそいつのことが好きで、どうしても自分と一緒になってほしいと強く思っているなら――お前の人生だ、略奪でも愛人でも好きなように生きろ。ただな、それはお前の性に合わないだろうし、相当苦しむだろうよ。俺が賛成しないのは、そういう側面からの判断もある」
「大丈夫です」
憑き物が落ちたように、気持ちはすがすがしく変化していた。
「たとえ奥さんと別れると言われても――」
多分、東城さんはそんなことしないだろうけど。私の方が大事だと思っていたなら、こんなはっきりしない関係にはなっていない。
「今の関係を続けるつもりはありません。私が心の底から幸せを感じるとは、思えないから」
近くの山からセミの鳴き声が聞こえる。顔は自然と微笑んでいた。さっき大笑いしなければ、きっとまだ泣いていただろう。
「――わかった。だったら俺もそのつもりで話す。お前がこれからやることはこれだ」
浅田が対策カードを取り上げ、夏輝に渡した。
「〈ペンタクルの9〉……? どういう意味なんですか?」
「お前は、この絵から何を感じる?」
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