第二章 逆位置の〈太陽〉

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 促されて、夏輝はカードに目を落とした。  描かれている場所は庭園だろうか。足元に配置された九つの金色のペンタクルが、豊かに実った果実を表しているように見える。中央には一人の女性。鷹匠のように大きな鳥を左手に乗せていて、その足元ではカタツムリがのんびりと地面を横切っている。  衣服、空、地面、ペンタクル……絵全体から、金色の輝きがあふれている。いや、ただの黄色なのだが、今の夏輝には金色に見えた。そしてそこに立つこの人物はなんだかとても―― 「この人、とても優雅に見えますね」  ぽつりと言っていた。 「光の中にいるみたい。この人自身も光を放っているような……」  見上げると、浅田はうっすらと嬉しそうな顔をしていた。 「黄色は繁栄や豊穣の象徴だ。多分、収穫期の小麦の色なんだろうな」  浅田が笑みを浮かべたまま色の解説をする。 「ああ、なるほど……」  大海原のようにどこまでも広がっている黄金色の小麦畑が、夏輝の脳裏に浮かんだ。日本では米が主食だが、タロットが使われていた国では小麦なのだろう。 「これからのお前は、〈ペンタクルの9〉をめざせ。これは……凄腕のフリーランスみたいなイメージかな。自分を律し、実力をつけ、発揮する」 「一匹狼みたいですね」     
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