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夏輝はすぐに返事をすることができなかった。今の仕事は、元々好きだった職種というわけではない。なかなか仕事が決まらない中でようやく採用されただけだった。生きがいといった類ではなく、給料のために働いているという感じだった。
東城と出会って恋が始まってからは、毎日会社へ行くのが楽しかった。でももしも東城を失ってしまったら、はたしてそれでも仕事を続けられるだろうか。東城と出会う前の状態へ単純に戻るだけ……とはならないだろう。
「きっと、以前より苦痛を感じると思います。あるいは虚無感……」
だろうな、と浅田が目を伏せる。
「でもお前が仕事に打ち込み、実力をつけ、自立して見事〈ペンタクルの9〉になれたときには、そんな苦痛はもうなくなってるはずだ」
自立……。東城に依存せず、己の足で立つということか。
「そしてもう一つ」
大十字の一番下をビシッと指差す。
「〈太陽〉……」
「これはお前だ。なかなか輝かしいものを持ってるじゃないか」
「でも逆位置ですよね」
カードの天地が逆になっている。浅田側から見れば逆位置だが、反対側に座る夏輝からは正位置に見える。〈ペンタクルの9〉はきらきらしく見えたが、この〈太陽〉のカードもまた、なにか別の強いエネルギーを放っている。
「バカタレ〈太陽〉だぞ? お前を表すカードが〈太陽〉なんだぞ?」
「でも、逆位置ですよね。〈太陽〉っていいカードですよね。その逆位置って、すごく悪い意味になるんですよね?」
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