第二章 逆位置の〈太陽〉

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「お前は本来、〈太陽〉の正位置なんだよ」 「どういうことですか?」 「このはだかんぼみたいに、無邪気で天真爛漫」  無邪気で天真爛漫……。たしかに昔は、男の子を子分にして昆虫採集に出かけたり、毎日大声で笑っていたりと、我ながら生命力にあふれた子供だったと思う。少なくとも社会人になるまでは、そういう気質だったはずだ。 「お前はこのはだかんぼみたいに、明るく元気に未来へ向かっていけば、でっかい太陽になれるんだ。周りを明るく照らし、あたたかさで包む。それが本来のお前の姿だ」 「本来の、私の姿……」  悩みなんてなかった頃の私は、毎日何を思い、何を考えていた人間だったか。もう、思い出せなくなっていた。でも―― 「私が、〈太陽〉?」 「そうだ」  なぜだろう、浅田の言うその話は、ほのかな高揚を覚えた。 「じゃあ、逆位置の意味は……?」 「お前そこ、こだわるなあ」  今度はあきれたり怒鳴ったりせず、浅田はかすかな柔らかさを笑みに含んだ。夏輝が単なる知ったかぶりで言っているのではないと、察しているからだろう。 「周りのカードの影響を見て判断すると、この場合――この場合はだぞ?」  念押しされて、はいはいとうなずく。     
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