第一章 目隠しは誰がした?

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 今までの警戒は解け、夏輝は慌ててイスへ座った。浅田の手にあるのは、厚紙製の小さな箱。そのデザインで中身が何なのか、夏輝にはわかってしまった。 「浅田さんってタロットやるんですか?」  さっき浅田に対してまさかと感じたことは、どうやら当たったらしい。この男は、タロット占いを知っている。  ベッドの上に、箱から取り出したカードの山が置かれる。間違いなくそれは、タロットカード。前に使ったままなのだろう。箱もかなり年季が入っていて、使い慣れている印象を受けた。順番通りなら、通常一番上には〈愚者〉か〈魔術師〉のカードがきそうなものだが、浅田の場合は〈審判〉だった。赤い翼の天使がラッパを吹いて死者が蘇る、キリスト教の『最後の審判』をモチーフとした〈審判〉。 「じいさんたちには黙ってろよ」  軽く笑みを浮かべ、浅田はカードを伏せて山を崩した。豪快で体力仕事がよく似合う浅田が、繊細そうなタロットを使えるとはかなり意外である。  タロットカードはトランプより大きい物が一般的だが、 「随分と小さいカードですね」  目の前にあるのはトランプより小さい。浅田が持つとまるで花札を操っているようだ。 「ああ、今はいろんなサイズがあるからな。小さいと扱いやすいし、持ち歩きも楽だから俺はこれを使ってる」 「いつも持ち歩いているんですか?」     
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