第二章 逆位置の〈太陽〉

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 はい――とは言えなかった。声は、言葉にならなかった。右手で自分の口をふさぐ。両目からは、止めどなく涙が流れ落ちていた。  何の涙かはわからない。でも、東城から離れることへの、寂しさの涙ではないことはわかる。  浅田から押し寄せてきた熱いエネルギーが、夏輝の中に居座ったのを感じる。何て心強い存在感。夏輝は両手で涙を拭い、顔を上げた。 「私、やります」  弱かった部分に、強さが生まれた。 「やれそうな気がします!」 「そうか」  穏やかに浅田がうなずく。 「ちょうど私が憧れてる女性に〈ペンタクルの9〉のような人がいるんです」  夏輝は玲子を思い浮かべていた。 「だからまずは、その人を常にイメージして、真似することから始めてみます」  知性にあふれ、いつも金色の鱗粉を振りまいているような美しさを持った玲子は、夏輝の憧れであり、まさに〈ペンタクルの9〉そのものに思えた。 「それはいいかもな」 「ですよね! そっか、玲子さんをめざせばいいんだわ」  え、と浅田が声を漏らした。同時に顔がピクリと上がる。 「……誰だって?」 「私の飲み友達に葉月玲子さんていう女性がいるんですけど、その人が〈ペンタクルの9〉のようなステキな女性なんです! 玲子さんをめざしながら、正位置の〈太陽〉になりますね!」  浅田はしばし目を見開いて沈黙していたが、     
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