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お前は、太陽の子だ。
私は、太陽の子――
夏輝は顔を上げた。
浅田さん、どうか私に、力を。
「――東城さん」
「え?」
にっこりと微笑んで東城の手を肩から外す。
「私、仕事が残ってるので、失礼しますね」
我ながら凛とした声が出たものだと感心し、資料室を出る。呆然とする東城を残して。
資料室のドアを閉めると同時に、夏輝は廊下を走った。足がもつれる。震えている。
よく言った。よく言えた。今まで一度も言えなかったのに。いつも、東城に流されていたのに。
階段を上って屋上へ駆け込み、勢いのまま数歩進む。膝に手をついて、息を整える。
「……言った」
言えた。私、言ってやった。夏輝の顔がほころぶ。
もちろん、関係をきっぱり絶つような言葉ではない。でもさっきのあれは、自分にとって大きな一歩だ。
小さな意思表示は、大きな自信へとなった。
上体を起こし、自分の両手を見る。まだ震えていたが、今までの手とは違って見えた。
力が漲ってきている――そう感じた。
「〈太陽〉の正位置、〈ペンタクルの9〉……」
両手で頬を包み、魔法の言葉を唱える。
「私は太陽の子。お天道様の下を堂々と――」
座り込み、手足を伸ばして仰向けになる。
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