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浅田宅の庭に面した六畳ほどの和室。簾を通すほどの風は入ってこないが、南部鉄器の風鈴の音はかすかに届いた。
浅田の手には、タロットカードが入った箱がある。午前中畑の手伝いをし、また山盛りの昼食を作って食べ、今は浅田にタロットで見てもらうために座っている。
「――で、今日は何が知りたいんだ?」
今日来たのは、しっかりと歩き始めた今の自分を改めて見てほしかったから。……なのだが、
「浅田さんは、どうしてタロットをやるようになったんですか?」
不意にそんなことを言っていた。
「はあっ? お前それ今聞くかっ?」
この豪胆な浅田が、繊細さを要するであろうタロット占いに手を出すなんて、今さらながら不思議に思えた。
「やっぱりなにか悩み事があって……?」
「バカ言え。俺は悩みがあったら自分で解決する」
「じゃあ何で?」
「そりゃ、あれだ、つまり……」
かすかに浅田の頬が赤らんだのを見てしまって、夏輝はピンときた。
「あー! もしかして女性絡み!? 彼女さんの影響とか!?」
「『元』だよ『元』! 大昔の!」
どうやら当たりである。
「へー、浅田さんも彼女いたんですねー」
「だから『元』だっつってんだろ!」
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