第二章 逆位置の〈太陽〉

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 やった、と夏輝は小さく歓声を上げた。 「それに前回は顕在意識に逆位置で出てた〈正義〉が、今回は潜在意識のポジションに正位置で出た。つまり、上っ面ではなく本心で、お前が道徳的な選択をするようになったということだ。――よく頑張ったな」  カードから顔を上げて、浅田が夏輝へニッと笑った。 「や……やだ、やさしくされると涙出ちゃうーっ」  夏輝は冗談めかして言い、本当に目頭が熱くなっていたことをごまかした。 「〈カップの5〉も前回出てたカードだな」  前回は小十字に横向きで出ていたが、今回は大十字の九時方向に移動している。 「ここは過去を表すポジションだから、今のお前にとってはもう通りすぎたこと、過去の出来事になったということだ。よかったな」  自分でも表情が輝くのがわかった。自分の努力がこうやって目に見える形でわかると、これでいいんだと自信がつく。 「それにしてもタロットって不思議ですね。前回と同じカードが出たり、正逆が入れ替わったり。そのときに合ったカードがちゃんと出ますよね」 「何度も占ってると、自分を表すカードってのが何となくわかってくる。お前の〈太陽〉みたいにな」  何だかカードに親近感を覚える。浅田にもそういうカードがあるのだろうか。     
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