第二章 逆位置の〈太陽〉

31/38
前へ
/156ページ
次へ
「そうそう、〈太陽〉のカードは裸の子供が描かれているが、その背後には大きな太陽があるだろ。無邪気な子供は、やがて成長して、人々を照らし輝く太陽になる。カードの絵を見ると、そういう意味も読み取れる」  へえ、とカードを手に取る。背景の太陽をじっくり眺めていると、あることに気づいた。 「この太陽の光線、二種類ありますけど。何か意味があるんですか?」 「お、よく気づいたな」  背景の太陽から放射線状に伸びる黄色い光線は、直線と、波のような曲線の二種類。 「直線は光、曲線は熱だろうな。太陽は光と熱でもって、周りを照らし、あたためるってことだ」 「そういう意味かあ。タロットっておもしろいですね。他のカードもじっくり見たら発見がありそう」 「――お前も、正しい方向へ力を発揮すれば、そのうち周りの人間を明るく照らして、あったかく包み込む太陽になるのかもな」  うっすら目を細めて、浅田が見つめていた。不覚にも、鼓動が高鳴った。 「やだ、いきなり壮大な話をするからびっくりしたじゃないですか」 「ま、一つの可能性だ」  くつくつと笑っている。 「浅田さんにも、自分を表すカードってあるんですか?」  夏輝に言われると浅田は腕組みし、天井を仰いだ。 「……ある」 「わー、何のカードですか?」  夏輝は好奇心に満ちた目を向けたが、浅田は天井に向けていた目を夏輝に下ろすと、 「教えない」  実に滑舌よく言い放った。 「ケチ!」     
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加