第一章 目隠しは誰がした?

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「まさか。今日はたまたまだ。時々古い友人に頼まれるから占ってやって、そのときバッグに入れたのを忘れてただけだ」  頼まれたということは、浅田は案外腕がいいのかもしれない。 「ここに呼んだってことは、私を占ってくれるんですね?」 「しょうがねえだろ。あんなアホみたいにハシゴしまくる迷える子羊を見ちまったんだから」  アホとは失礼なっ。 「さて」  浅田と視線がぶつかった。 「何が知りたい?」  思わず息を飲み込む。浅田の視線が体の内部まで入り込んで、思考を読み取られる気がした。 「この期に及んで仕事運が知りたいとか言うなよ?」  意地を張ることをあきらめ、息を深く吐き出す。 「……職場に、気になる人がいます」  裏返しになったカードを見つめ、白状する。 「仕事でとてもよくしてくれて、やさしくて、顔もタイプで、好き……だったと思います」 「だった?」 「今は……ちょっとわからなくなってしまって。このまま好きでいていいのか、やめといた方がいいのか……」  ふうん、ともらして、浅田はあぐらを組み直した。 「わからなくなったと言っておきながら、お前はまだ、そいつを好きなんじゃないか?」  表の道路から、車が通り過ぎる音が聞こえた。さっきまで部屋に入る入らないでドキドキしていたのに、今は妙な冷静さに襲われていた。     
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