第二章 逆位置の〈太陽〉

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 仕切り直すように浅田がカードを指差した。縦一列に並んだ四枚のカードの、下から二番目。 「〈ペンタクルのクイーン〉……みたいなやつと縁がありそうだ」  五芒星が描かれた大きな金貨のようなものを、大事そうに抱え、見つめている女王。 「……女性のカード? 恋愛のこと聞いてるのに、女性との出会いですか?」 「クイーンが出たからといって女性だけを表すわけではない。〈ペンタクルのクイーン〉は派手さはないが、人にあたたかく、誠実に向き合う、よき妻のタイプだ」  そういう男、と浅田が付け足す。そんな男性が周りにいただろうかと、夏輝はカードを手に取った。 「うーん……会社にそういう人いたかなあ。すごく気がつく若い男の子いるけど、あの子は……最近特にそうだけど、親切の押し売りって感じなのよねえ……。あ、物流担当のアラサー独身男性とも最近親しくなったけど……〈ペンタクルのクイーン〉タイプではないなあ。あ、あと最近――」 「……お前、最近モテてんだな」 「この絵、クイーンの座ってるイスは立派だけど、場所はアウトドアなんですね」  クイーンのイスには動物の彫り物。背景には山があり、植物があり、よく見たらウサギらしき動物もいる。人工物はほとんどないが、豊かな印象がある。     
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