14人が本棚に入れています
本棚に追加
仕切り直すように浅田がカードを指差した。縦一列に並んだ四枚のカードの、下から二番目。
「〈ペンタクルのクイーン〉……みたいなやつと縁がありそうだ」
五芒星が描かれた大きな金貨のようなものを、大事そうに抱え、見つめている女王。
「……女性のカード? 恋愛のこと聞いてるのに、女性との出会いですか?」
「クイーンが出たからといって女性だけを表すわけではない。〈ペンタクルのクイーン〉は派手さはないが、人にあたたかく、誠実に向き合う、よき妻のタイプだ」
そういう男、と浅田が付け足す。そんな男性が周りにいただろうかと、夏輝はカードを手に取った。
「うーん……会社にそういう人いたかなあ。すごく気がつく若い男の子いるけど、あの子は……最近特にそうだけど、親切の押し売りって感じなのよねえ……。あ、物流担当のアラサー独身男性とも最近親しくなったけど……〈ペンタクルのクイーン〉タイプではないなあ。あ、あと最近――」
「……お前、最近モテてんだな」
「この絵、クイーンの座ってるイスは立派だけど、場所はアウトドアなんですね」
クイーンのイスには動物の彫り物。背景には山があり、植物があり、よく見たらウサギらしき動物もいる。人工物はほとんどないが、豊かな印象がある。
最初のコメントを投稿しよう!