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今夜も玲子と待ち合わせである。いつもの店へ行くと、すぐに玲子の姿が見えた。今日はカウンターではなく、珍しく小振りな丸テーブルの席にいた。
玲子さん、と声をかけようとしたが、一緒にいる人物の顔が見えて、夏輝は反射的に、
「浅田さんっ?」
そちらの名を呼んでいた。
振り向いた二人は、たしかに玲子と浅田だった。
「お前……っ」
浅田も夏輝の顔を見て驚いている。
「夏輝ちゃん、お疲れ。先に始めてたわよ」
艶っぽい「いい女オーラ」を放って、玲子がグラスを軽く上げる。
「何で浅田さんがいるんですか?」
浅田は夏輝から目をそらし、玲子をにらんだ。玲子はまったく気にしない様子で夏輝に説明を始めた。
「ごめんね勝手に呼んで。でも夏輝ちゃんが前に話してた占い生産者の浅田さんって、多分この人のことだろうなと思って呼びつけちゃった」
ニコニコと笑っているが、夏輝にはまだ状況が飲み込めない。
「え、お二人って、お知り合いなんですか……?」
口端が引きつるのを感じながら問うと、浅田はますます玲子をにらみつけた。だが玲子もまたますます笑顔を浮かべて、夏輝の問いに答えた。
「私と浅田、前に付き合ってたのよ」
「玲子!」
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