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れ……玲子? 夏輝の引きつり気味だった口端が、ピクッと大きく痙攣した。
……何だこれは。
小振りの丸テーブルに、三人顔を突き合わせて座っているこの状況。
「付き合ってたのは大学のときにね。ちょっとだけ。別れた後も腐れ縁で、こうやってちょこちょこ」
うふふ、と玲子が金粉を振りまくように笑う。
「ちょこちょこ、ですか……」
「そうなの。同い年だし、何となく気が合ってね」
浅田をちらりと見ると、片肘ついて、おもしろくなさそうに顔をしかめている。
今日は玲子さんと飲むはずだったのに。この前の話の続きをしようと思っていたのに。何で玲子さんは浅田さんを呼んだんだ。しかも玲子さんは浅田さんの元カノで、浅田さんは玲子さんの元彼で、浅田さんは玲子さんを「玲子」って呼び捨てにして――
何かが、おもしろくない。
「あら夏輝ちゃん、いい飲みっぷり」
中ジョッキに入った生ビールが置かれてから一分も経たずに、夏輝はほとんどを飲み干していた。
「生中おかわりお願いしまーす!」
「おいおい、ペース速すぎだろお前」
「私『お前』って名前じゃないんですけどーっ?」
塩味のきいた、つまみのポップコーンを口へ放り込む。浅田は口端を引きつらせ、玲子は「そうよねえ」と妖艶に微笑んだ。
「あ!」
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