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玲子が笑いながら、夏輝の口元を自分のハンカチで拭いてくれた。
玲子を見る。ああ、今日もいい女だこの人は。ただ顔がいいだけじゃないんだ。知性的だし、仕草がいちいち決まってるし、それに、やさしいんだ。今だってこうやって私の世話を焼いてくれて……。
もしもこの二人が、よりを戻すのだとしたら、私はきっと、邪魔になってしまう。
「えっ? どうしたの夏輝ちゃんっ」
夏輝の目からはらはらと涙がこぼれた。玲子が慌ててハンカチで涙を追う。
元々一人で行動していたから、今さら一人になってもべつにどうってことはないはずなのに。ダメだもう、玲子さんと親しくなってしまったから、今さらこの人を失ってまた一人に戻るなんて、それは、つらすぎる……。
ハンカチごと、両手で玲子の手をガシッとつかまえる。
「浅田さんのバカ!」
「は、俺?」
「こんな美人でセクシーで酒豪の玲子さんが彼女だなんて、うらやましすぎます!」
「『元』だ『元』! 酒豪は当たってるけど」
「夏輝ちゃんってばかわいいわねえ」
玲子も空いていた方の手で夏輝の手を包み込み、喜んでいる。
「ていうか完全に美女と野獣じゃないですか!」
「……どっちかっつうと玲子の方が野獣なんだがな」
「あら、人聞きの悪い」
「浅田さんエロい!」
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