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「いやそっちじゃなくて、タチの悪い性格っていう……」
「生中おかわりーっ」
「……聞いてねえなコイツ」
そんなに長い時間を待たずに、夏輝は酒に飲まれていた。まだかろうじて意識と思考能力はあるものの、視界とろれつは怪しい。
「ねえ夏輝ちゃん。夏輝ちゃんは今、フリーなのよね?」
「フリー? フリーですよ。自由ですよ私は。太陽の子ですから」
「だめだコイツ。もうできあがってる」
今何時だろう、とケータイ画面を起こすと、ケルト十字の画像が現れた。そうだ開いたままだったんだ、などとぼんやり思いながら画面を見つめる。
「ねーえ、だったら浅田と付き合うのはどう?」
今度は浅田が吹いた。
「やだ、汚いわね」
「お前のせいだろ! 何言ってんだ急に!」
「どう? 夏輝ちゃん」
ゆらゆらと歪み始めた視界で、玲子が目を細めて笑っている。
「夏輝ちゃんに付きまとってる男と浅田、どっちが好き?」
どっちって……。ケータイ画面の〈恋人たち〉に目が止まる。あれこれ理由つけずにいいと思った方へ素直に行けと、浅田は言った。
「どっちがいいとか、誰がいいとか、わかりません……けど……」
「けど?」
好奇心に満ちた目をして、玲子が顔を近づける。
「お天道様の下を堂々と歩ける人がいいです」
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