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「なるほどねえ」
でも、と夏輝は唇を尖らせた。
「今は玲子さんがいいんだもん。玲子さんの方が、断然……ステキだもん。私、玲子さんのこと……大好き、だもん……。だから……」
視界に丸テーブルが接近し、ゴン、という音と衝撃が額にあった。
「やだ夏輝ちゃんたら! かわいいもう!」
「そんなことよりコイツ落ちたぞ。飲ませすぎだ」
丸テーブルに突っ伏す夏輝の耳に、二人の声が聞こえてくる。
――浅田、飲んでないなら夏輝ちゃんのこと送ってあげてね。何で俺が。私じゃ運べないもの。いつもこんな飲み方してんのか? いいえ、今日はいつもより早いし、倍以上飲んだわね。はあ? アホかコイツは。
――アホだとう? 深く落ちかけた夏輝の意識が、かすかに浮上する。
よっぽどおもしろくなかったのねえ、この状況。悪いことしちゃったかしら。……お前結局、何がしたかったんだよ。べつに? あなたと夏輝ちゃんの顔が見たかっただけよ。俺の顔見てる暇があったら――
夏輝の意識が、また沈みかける。
玲子、お前今のままだと、こいつ失うぞ。
浅田の声のあと、しばらく沈黙が続いた。
……ねえ。何だよ。――また相談に乗ってくれる?
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