第三章 三つの聖杯といびつな宴

7/19
前へ
/156ページ
次へ
「なるほどねえ」  でも、と夏輝は唇を尖らせた。 「今は玲子さんがいいんだもん。玲子さんの方が、断然……ステキだもん。私、玲子さんのこと……大好き、だもん……。だから……」  視界に丸テーブルが接近し、ゴン、という音と衝撃が額にあった。 「やだ夏輝ちゃんたら! かわいいもう!」 「そんなことよりコイツ落ちたぞ。飲ませすぎだ」  丸テーブルに突っ伏す夏輝の耳に、二人の声が聞こえてくる。 ――浅田、飲んでないなら夏輝ちゃんのこと送ってあげてね。何で俺が。私じゃ運べないもの。いつもこんな飲み方してんのか? いいえ、今日はいつもより早いし、倍以上飲んだわね。はあ? アホかコイツは。 ――アホだとう? 深く落ちかけた夏輝の意識が、かすかに浮上する。  よっぽどおもしろくなかったのねえ、この状況。悪いことしちゃったかしら。……お前結局、何がしたかったんだよ。べつに? あなたと夏輝ちゃんの顔が見たかっただけよ。俺の顔見てる暇があったら――  夏輝の意識が、また沈みかける。  玲子、お前今のままだと、こいつ失うぞ。  浅田の声のあと、しばらく沈黙が続いた。 ……ねえ。何だよ。――また相談に乗ってくれる?     
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加