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「いいからお前んち教えろって。送ってやるから」
送ってくれるのかラッキー、と夏輝は思ったが、
「玲子は昔っから自分ちに呼びつけるから場所わかるけど、夏輝は俺んちに来るからなあ」
浅田の独り言を聞いた途端、何かすっきりしないねじれた怒りが込み上げ、夏輝は激しく顔をしかめた。
「どうした? 吐くのか?」
「――不愉快」
「は?」
「直観に従って正しい方を選べばいいんでしょ? 不愉快だから帰る。さようなら」
「いや送るから家教えろって。お前ベロベロ……」
「いいっ! 歩いて帰るし! 絶対家教えないから送んないでバカ!」
「バカはお前だ! 女がこんな夜更けに一人で歩くな! そんなに家教えたくないなら俺んち連れ込むぞ! いいのかそれで!」
「受けて立とうじゃないの! どこだって好きなとこ連れていきなさいよ! 私寝るから着いたら起こして!」
助手席の背もたれを勢いよく倒す。
「バッカヤロウ! そういうことをなあ!」
「何よ!」
いら立ちがまじった、盛大なため息を浅田が吐き出した。
「一生後悔するから、東城には言うなよ」
まだいらだちは含まれていたが、大分粗熱が取れた声音だった。それだけに、浅田がわりと真剣に心配しているのだと察する。
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