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「……あれ? 何で東城さんの名前、知ってるんですか?」
倒れた背もたれから、頭だけ上げる。
「お前が前に自分で言った」
……記憶にない。夏輝はぱたりと頭を背もたれに落とし、車の天井を見つめた。
「……東城さんには言いませんよ。だってそれは、私の直観とは違うもの」
わずかな沈黙のあと、「ならいい」という浅田の低い声と、エンジンのかかる音が聞こえた。
「夏輝」
「もう何よっ」
「着いたぞ」
――どこに? 顔を上げると、夜の山を背負った、真っ暗な古民家が見えた。
「どこここ。ていうか見たことある」
「だから俺んちだって。お前ずっと爆睡してたぞ」
「えっ? やだ! 何で私浅田さんちに連れ込まれてんの!?」
「……お前、二度と酒飲むな。玲子にも言っとかないとダメだな」
玲子さん――そうだ、そうだった。徐々に記憶を取り戻す。
「……浅田さん、〈審判〉のカードって、どういう意味?」
「何だいきなり」
「いいから早く!」
浅田は面倒くさそうに舌打ちすると、〈審判〉のカードについて説明を始めた。
「〈審判〉はキリスト教の『最後の審判』をモチーフにした、死者が蘇ってる絵だ。だから意味としては、復活、再生、成就、実を結ぶ――」
「もういい」
「何なんだよっ」
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