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「浅田さん、玲子さんのこと、まだ好きなんだね」
夏輝はシートのわきを探り、倒していた背もたれを起こした。
「……何でそうなる」
「前にホテルで占ってもらったとき、箱から出したカードの一番上、〈審判〉だった」
浅田はいつも、願掛けの意味でテーマとなるカードを上にして箱にしまうのだと言っていた。
「時々古い友人に頼まれて占ってるって言ってたでしょ。それ、玲子さんのことだよね」
――また相談に乗ってくれる?
酔っぱらって途切れ途切れの記憶の中で、さっきの玲子の言葉をうっすら覚えている。
「私の前に占った人は玲子さんで、浅田さんは願掛けで〈審判〉を上にした。……玲子さんのことがまだ好きで、よりを戻したいからそうしたんでしょ?」
「その解釈は違うな。俺はべつに玲子とよりを戻したいわけじゃない」
「嘘だ」
「嘘じゃねえよ」
「でも玲子さんは? 何度も浅田さんと会ってるわけでしょ?」
「あいつはあいつでいろいろあって、だから占ってくれって言われる。通院患者みたいなものだ」
「いろいろって?」
「守秘義務」
そりゃそうだけど、と夏輝は唇を尖らせた。
「玲子さんが昔占ってもらって心をえぐられたっていうのは、浅田さんのことだったんだね」
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