14人が本棚に入れています
本棚に追加
適当に言い訳をして、玄関のわきにある縁側へ座る。軒下に吊るされた、南部鉄器の風鈴が静かに鳴った。
つっかけを引きずる音が近づく、浅田も夏輝の隣へ腰を下ろした。
「何ですか」
「俺も星を見にきた」
さっきよりも星が薄い。センサーライトが点灯しているからだ。
黙って座り続けていると、やがてそれは消えた。消えた直後は目がくらむ。慣れてくると、真っ暗な視界の上方で小さな光が徐々に瞬き始めた。
無数に広がる光の粒。目を凝らすと、手前に見える星のさらに奥に、霧吹きで吹いたような細かな星が見える。見ようとすればどこまでも見えそうで、それをすると宇宙空間へ吸い込まれそうな感覚になる。体の境界線が曖昧になって、宇宙と同化してゆく。自分が今縁側にいることが、急に不確かな感覚となった。
それが不意に心許なく思えて、隣の浅田を見上げる。その瞬間、また明かりがついた。
「バカ、動くな」
夏輝のわずかな動きにセンサーライトが反応したのだ。
「すみません……」
浅田の存在を確認できて、どこか安堵する自分がいる。
今度は夜空を見上げたままで動きを止める。今はまだ庭が明るいから、星が薄い。
「すごい星でしたね……」
「もう少しじっとしてろ。またライト消えるから」
最初のコメントを投稿しよう!