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二人で息を潜めて夜空を見上げる。何だか夢から覚めてしまったようで、――酔いから覚めたのもあるのだろうが、急に気恥ずかしく思えた。
「あの、なんかすみません。こんな夜遅くに――」
居たたまれなくなって浅田を向くと、
「動くなって言ってんだろがっ」
浅田の大きな手にがっちりと頭をわしづかみされ、そのまま引き寄せられた。夏輝の頭が、浅田の厚い胸板に押し付けられる。
「またカウントし直しだ」
そ……そういう問題!? 浅田の匂いが、いつもより濃密に鼻腔をくすぐる。せっかく酔いが覚めてきたのに、酒ではないものに再び酔わされる。
「冬の星はこんなもんじゃない。空が澄んでるから光が強くてな。うるさいくらいに瞬く」
そんなことを言ってる場合か! と心乱されていたが、浅田がまったく動揺していないとわかると、自分だけ焦ってたのがバカらしくなって、夏輝も徐々に落ち着きを取り戻した。
「……星って、冬の方が光るんですか?」
「何だそんなことも知らんのか」
「市街にいると、星の光って年がら年中弱いですから」
「じゃあ、冬にも来いよ」
「そうですね」
「秋にも来いよ。稲刈りもあるし」
「じゃあ手伝いますね」
新米楽しみ、などと話しているうちに、明かりが消えた。一瞬目がくらんだのち、再び夜空に細かな星々が存在を現す。
「わあ……」
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