第三章 三つの聖杯といびつな宴

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 そのカードがどんな絵柄か、夏輝はすぐに思い出すことができなかった。 「ふうん。……玲子さんのためにですか?」 「お前にだ。いや、お前にっていうか――」  浅田の言葉が途切れ、一瞬の沈黙のあと、夏輝の頭がグイッと押し返された。センサーライトが再び点灯し、現実に引き戻される。 ……あれ? 浅田を見ると、すでに立ち上がって玄関を向いていた。 「もう中に入れ」 「え? 〈ワンドの4〉は? まだ意味聞いてな……」 「その話は終わりだ! いいから入れ!」  そう言うなり浅田は玄関に姿を消した。 「……え? なに?」  何だったの今の、と首をかしげる。今さらながらこの状況に照れたのだろうか。 「浅田さんも照れるんだ」  そう思うとおかしくてしょうがない。夏輝は笑いを堪えながら玄関へ向かった。 「いやでも、このまま本当に三角関係になっても困るし」  玲子と浅田を取り合うのもごめんだし、浅田に好かれて玲子に恨まれるのもごめんだ。 「いやいや待て待て。取り合うとか好かれるとかないから。ないない。何言ってんの私」 「なにモタモタしてんだっ」  玄関前で立ち往生していたら、浅田が戻ってきて顔を出した。 「今入ります!」     
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