14人が本棚に入れています
本棚に追加
そのカードがどんな絵柄か、夏輝はすぐに思い出すことができなかった。
「ふうん。……玲子さんのためにですか?」
「お前にだ。いや、お前にっていうか――」
浅田の言葉が途切れ、一瞬の沈黙のあと、夏輝の頭がグイッと押し返された。センサーライトが再び点灯し、現実に引き戻される。
……あれ? 浅田を見ると、すでに立ち上がって玄関を向いていた。
「もう中に入れ」
「え? 〈ワンドの4〉は? まだ意味聞いてな……」
「その話は終わりだ! いいから入れ!」
そう言うなり浅田は玄関に姿を消した。
「……え? なに?」
何だったの今の、と首をかしげる。今さらながらこの状況に照れたのだろうか。
「浅田さんも照れるんだ」
そう思うとおかしくてしょうがない。夏輝は笑いを堪えながら玄関へ向かった。
「いやでも、このまま本当に三角関係になっても困るし」
玲子と浅田を取り合うのもごめんだし、浅田に好かれて玲子に恨まれるのもごめんだ。
「いやいや待て待て。取り合うとか好かれるとかないから。ないない。何言ってんの私」
「なにモタモタしてんだっ」
玄関前で立ち往生していたら、浅田が戻ってきて顔を出した。
「今入ります!」
最初のコメントを投稿しよう!