第四章 近づく〈塔〉

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〈塔〉のキーワードは『崩壊』だと浅田は言っていた。関係が壊れる、トラブルが起こる、あるいは考えが一変するような出来事が起こるなど、とにかく今まで積み上げたものがバーンと壊れることを表すらしい。  バーンって言われても……。夏輝はビールを飲み干し、苦い顔をした。  今日は会社の人に誘われ、大勢で飲んでいた。店は隠れ家の雰囲気を売りにしていて、場所も路地を何本か入り込んだ、わかりづらいところにあった。  最初に占ったとき、〈塔〉は最終結果つまり遠い未来の位置に出た。意識改革をして、運勢をよくしたはずだったのに、今度はなぜか近い未来の位置に出た。以前より、〈塔〉が近づいている。ということは、夏輝、浅田、玲子との関係で何かトラブルが起こるということなのか。  宴の中締めが済み、夏輝は帰ることにした。 「えーっ、坂井さんもう帰っちゃうの? 二次会行こうよ」 「すみません、皆さんで楽しんでください。今日は楽しかったです。お先しますね」  さすがに先日飲みすぎたことは、反省しなければならない。 「ざんねーん」 「お疲れー。気をつけてねー」  みんなに見送られ、夏輝は店を後にした。 .
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