第四章 近づく〈塔〉

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「坂井さん、最近雰囲気変わったよね」 「俺もそれ思ってた。明るくなったよね。仕事も頑張ってるし」  夏輝が去ったあと、男性社員たちが口々に言った。 「俺、狙っちゃおうかな。坂井さんって彼氏いるの?」 「知らないなー。東城さん、知ってます?」  不意に話しかけられ、ケータイに何やら打ち込んでいた男――東城が顔を上げた。 「さあ、僕は知らないなあ」  整った顔立ちに笑みを浮かべると、東城は画面の送信ボタンに触れてから立ち上がった。 「じゃ、僕も失礼するね。お疲れ様」  店を出た夏輝は、大通りに出ようと路地を歩いていた。 「あれ? ……何か違うな」  普段行かないエリアを、しかもほろ酔いで歩いているから、間違った道に出てしまったようだ。視界に映るビルの並びが、どうも見慣れたものとは違っていた。あたりをキョロキョロと見まわしながら歩を進める。 「へえ、こんなところにビジネスホテル街があったのね」  大きすぎず小さすぎずのビジネスホテルがあちこちに建っている。大通りにも近いはずだから、出張者が利用するには便利だろうなどと思いながら歩いていると、見覚えのある人影が視界に入った。     
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