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「坂井さん、最近雰囲気変わったよね」
「俺もそれ思ってた。明るくなったよね。仕事も頑張ってるし」
夏輝が去ったあと、男性社員たちが口々に言った。
「俺、狙っちゃおうかな。坂井さんって彼氏いるの?」
「知らないなー。東城さん、知ってます?」
不意に話しかけられ、ケータイに何やら打ち込んでいた男――東城が顔を上げた。
「さあ、僕は知らないなあ」
整った顔立ちに笑みを浮かべると、東城は画面の送信ボタンに触れてから立ち上がった。
「じゃ、僕も失礼するね。お疲れ様」
店を出た夏輝は、大通りに出ようと路地を歩いていた。
「あれ? ……何か違うな」
普段行かないエリアを、しかもほろ酔いで歩いているから、間違った道に出てしまったようだ。視界に映るビルの並びが、どうも見慣れたものとは違っていた。あたりをキョロキョロと見まわしながら歩を進める。
「へえ、こんなところにビジネスホテル街があったのね」
大きすぎず小さすぎずのビジネスホテルがあちこちに建っている。大通りにも近いはずだから、出張者が利用するには便利だろうなどと思いながら歩いていると、見覚えのある人影が視界に入った。
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