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夏輝からほんの数十メートル離れたところを、並んで横切っていく、玲子と、浅田。
「うそ……」
いや、今日会うって言ってたし、この前も会ってたわけだし、べつにおかしいことではない。必死に自分へ言い聞かせる。でも、二人が足を止めた場所は――
「うそ!」
ビジネスホテルの、入口。
何で、と思う反面、やっぱり、という確信が胸の中に充満する。
ホテルの入口で浅田と玲子が何やら言葉を交わしている。玲子の表情は見えない。でも浅田の顔は見えた。今まで見たことがない、真剣な顔をしている。
何を、話しているの。
これから、何を、するの。
二人から目を離すことができない。まばたきも呼吸も忘れて立ちすくんでいると、
「見つけた、坂井さん」
肩に誰かの手が乗った。瞬時にその声と手が誰のものなのか、察してしまった。恐る恐る振り向くと、そこにいたのは、察したとおりの人物――
「と……東城さん……っ」
うっすらと不敵な笑みを浮かべている。
「今日は逃がさないよ? 坂井さん」
強烈な男の色香を放ちながらも、東城の目は獲物を見つけた蛇のように鋭い。
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