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空が綺麗だろう?
同刻。
太平洋上、小さな交通艇の船首で。
「チエーロくん、だったかな。もうじき台湾に着く。そこで給油して、そこからまたしばらく船旅だ。この様子だと、連中はお前さんを取っ捕まえる気は無さそうだ。安心してもらって大丈夫だぜ。」
「この船は、どこまで行くのですか?」
日に焼けた壮年の船長は、ニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべた。
「黄金の国ジパング、日本だよ。サムライに斬られないように用心しないとな。」
船長は、カッカッカッ、と笑った。
「心配すんな。俺も、これから油を入れてもらう業者も、日本についてからお前さんの世話をしてくれる奴も、みんなヴェルデの知り合いだ。多分、そのポケットに差したリボルバーを抜くことにはならねぇ。」
「……いつから気づいていたのですか?」
「察しはついてたよ。ヴェルデの考えそうなことだ。」
お前さんもぼちぼち降りてこいよ、と言い残して、船長は降りていった。
「日本、か……。」
チエーロは、胸ポケットから何重にも折った封筒を取り出して、開いた。
中にあったのは、一枚の便箋だった。
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