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「そんなあんたが、今じゃしがないBarのマスターとは。時の流れは残酷だねぇ。」
男は薄ら笑いを浮かべながら、カウンターに着席した。
「俺の名前はべロウ。今日はあんたにいい話を持ってきた。」
何かを注文しようとする素振りすら見せずに、べロウと名乗る男は流れるように話し続けた。
「あんた、ドゥーショに飼い殺されてるんだって?しかもいいように使われてるって。」
「……それがどうした。」
「俺はそれが不憫でならなくてよぉ、もう一度あんたに活躍して欲しいってわけだ。」
「余計なお世話だ。」
「そこで、だ。」
こいつは、俺の言葉に耳を貸す気がないらしい。ベロウの笑みに厭らしさが増していく。
「俺たちと組まねぇか。俺たちはロサンゼルスを拠点に麻薬シンジケートをやってる。その気になりゃ、これぐらいの街なら制圧できる。このままドゥーショの犬でいたって先はねぇ。賢明なあんたなら、ここいらで俺たちに付いといた方がいいって分かるはずだ。」
「……俺にどうしろと。」
俺が乗ったと思ったのか、ベロウはさらに調子付き、早口でまくし立てた。
「スパイだよ。この店、 三合会とドゥーショの会合に使われたんだろ?さすがに俺もその会合の内容までは知る由もない。おそらく今後も会合は開かれるだろうから、その内容を横流ししてくれるだけでいい。あ、もちろんギャラは弾むぜ。」
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