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サシャの携帯が鳴った。
サシャはワンピースのポケットから携帯を出すと、ニコッと笑って喫茶店の外に出て行った。
両親との連絡がついたのかもしれない。
窓から電話をしているサシャを見ているとサシャはナイキのスニーカーで地面を蹴りながら、話をしていた。
アイスコーヒーを飲んでトーストを口に放り込んだ。
サシャは電話を終えて戻ってくると、向かいに座り、指でOKサインを作って見せた。
どうやら送金してもらえる事になったのだろう。
朝食を食べて外に出る。
暑そうに手で自分を扇ぐサシャに、このまま街に出ようと言うとサシャは嬉しそうに頷いた。
ガレージから車を出すと、サシャを乗せて坂を下りて行く。
特に何処へという当てもなく、海の方へと走り、海岸沿いに車を停めた。
噎せ返るような海の香りが潮風に乗って押し寄せるようだった。
私とサシャはその海のざらつく手摺に肘を突き、沖を行く船を見ていた。
「私ノ街、軍港アリマス。バトルシップデ、イッパイデス」
サシャはそう言って潮風に目を細めた。
サシャの肩越しにその港に隣接する公園を見た。
楽しそうに笑うカップルでいっぱいだった。
私はサシャに微笑む。
「日本は楽しかったかい…」
サシャは少し考えたが、小さく頷いた。
手摺に背中を着けて、山の方を見た。
「日本ハ平和ナ国デス…。日本ニ来テ良カッタデス」
私を覗き込む様に言うと笑った。
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