8人が本棚に入れています
本棚に追加
そこで彼女を見たのは初めてでは無い気がした。
大きなリュックサックを足元に置いて、膝を抱えて座っている彼女。
それが無性に絵になる気がした。
肩までのサラサラと風を拾う金髪と栗色の瞳。
タンクトップにショートパンツ姿でナイキのスニーカーのつま先で石畳の地面を擦っていた。
私は向かいの喫茶店から出て来たところで彼女を見つけた。
その瞬間、彼女に声をかけなければいけない気がしたのだった。
流れる人並みを横切り、彼女の傍にあった自販機に小銭を入れてペットボトルの水を買った。
荒々しい音と共に取り出し口に落ちるボトル。
それを取り出すと、彼女に渡した。
案の定、彼女は喉が渇いていたのか、渡したペットボトルを素直に受け取り、早速口につけた。
私はその彼女の様子を見て微笑み、周囲の目も気にせずに彼女の横に座った。
「ノド、渇イテマシタ。アリガトウゴザイマス」
彼女は片言の日本語で礼を言った。
「何処から来たの…」
質問が聞き取りにくかったのか、日本語が分からなかったのか、もう一度言ってくれと言わんばかりに彼女は耳に手を当てた。
最初のコメントを投稿しよう!