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リビングに戻るとサシャはリュックサックの外側のポケットからノキア製のスマホを取り出して、私に見せた。
「チャージサセテ下サイ」
キッチンのカウンターの横に付いているコンセントを準備して、彼女のスマホを充電した。
泊まる所も無く、充電が切れて数日放置していた様だった。
彼女は、電話さえ出来れば、カリーニングラードの両親に送金してもらい帰国出来ると言う。
彼女はソファに座り掌の中で二つの玉のようなモノをカチカチと触っていた。
「それは何…」
そう訊くとそれを私の手に乗せた。
私はその二つの玉をじっと見つめた。
サシャは少し考えて、
「アンバー…」
そう答えた。
琥珀の玉だった。
琥珀色とはよく言ったモノで、透き通るその玉は美しく、その玉の中に走る様に見える層が虹の様に輝いて見えた。
「アンバー…、琥珀か…」
私は微笑んでその二つの玉を彼女の掌に返した。
琥珀は鉱物に思われるがそうではなく、樹液の化石であり、一億三千年程前のモノだと言われている。
「綺麗だね…」
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