9人が本棚に入れています
本棚に追加
ガチャッと音がして、彼女は入ってきた。明かりを点け、僕に駆け寄り、眩そうな顔で笑って、それから………
そんな彼女が死んだ。
僕は原因をよく知らされていない。
ただ、彼女は死んでしまい、二度とここには来ない。
僕は、ただ悲しみに暮れるしかなかった。
時々彼女のことを思い出す。
彼女はよくここに来て、色々なことを話してくれた。
自分の家族のこと、ピアノのコンクールのこと、弾いている曲のこと。
自分がコンクールで優秀な賞を取った日は、いつもトロフィーを持って会いに来てくれた。
「あなたがいるから、私は頑張れる。」
そう言って、彼女はニコッと笑うのだ。
その笑顔が、僕は好きだった。
彼女と暫く話をした後、僕らは一緒に踊る。
あるときは静かに、またあるときは激しく。音楽が響き、そこはダンスフロアとなるのだ。
ある日のことだった。彼女は僕に、こんな話をしてくれた。その日はあいにくの雨で彼女は雨宿りがてら僕に会いに来た。
「私ね、晴れた空が好きなんだ。特に春の。」
彼女は続ける。
最初のコメントを投稿しよう!