蒼天葬送曲

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ガチャッと音がして、彼女は入ってきた。明かりを点け、僕に駆け寄り、眩そうな顔で笑って、それから……… そんな彼女が死んだ。 僕は原因をよく知らされていない。 ただ、彼女は死んでしまい、二度とここには来ない。 僕は、ただ悲しみに暮れるしかなかった。 時々彼女のことを思い出す。 彼女はよくここに来て、色々なことを話してくれた。 自分の家族のこと、ピアノのコンクールのこと、弾いている曲のこと。 自分がコンクールで優秀な賞を取った日は、いつもトロフィーを持って会いに来てくれた。 「あなたがいるから、私は頑張れる。」 そう言って、彼女はニコッと笑うのだ。 その笑顔が、僕は好きだった。 彼女と暫く話をした後、僕らは一緒に踊る。 あるときは静かに、またあるときは激しく。音楽が響き、そこはダンスフロアとなるのだ。 ある日のことだった。彼女は僕に、こんな話をしてくれた。その日はあいにくの雨で彼女は雨宿りがてら僕に会いに来た。 「私ね、晴れた空が好きなんだ。特に春の。」 彼女は続ける。
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